パソコン、携帯電話による子供のインターネット利用と親の責任
-活発な議論が必要-

 このところ私の研究室や自宅に小中学校教師からのメールや電話がふえてきた。内容は今回の佐世保小学校の事件で「このままいくと学校が悪い。学校の責任だ。もっとしっかりしろということにならないか」という心配である。「先生はどう思いますか?」と聞かれる。

 で、私の意見は以前と変わりません。「子供のインターネット利用は学校よりも親の責任です。なんでも学校に。ネット時代の躾も、学校に任せるということにならないように。」と答えている。親達が、ただこどもに装置を買い与えるだけで、責任を転嫁するようでは、学校も家庭もIT時代にはやっていけない。共倒れである。

 インターネットは自己責任の世界。小学生くらいなら誰がみても子供に自己責任は問えない。親が最終責任者である。第一に子供のネット利用の前提である日常的な判断能力や自制力、責任感は、個々の子供のレベルで違う。これは価値観にも関係するので、大人の文化の影響度も家庭により違う。それにネット利用時間は、学校より家庭や塾など学校以外のほうが多い。とくに携帯電話からのインターネット利用はそうである。とは言っても「親は子供のインターネット利用を管理できる?」という疑問も出てくる。私の答えは、と言う前に、たまたまTBSラジオ アクセス(2004年06月04日)のテーマが 佐世保の同級生殺害事件にからめて-「子供のネット利用」について考える。あなたは、小学生のネット利用を親が管理できると思いますか?-という議論をはじめていたので、この感想をまず述べたい。

 結論から言うと A管理できる B そうは思わない C その他、というグルーピングで、結果はBが多数派なのだ。ま、これが現状でしょうか。

 A 管理できる 16

 B そうは思わない 60

 C その他  23

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ここでA と答えた人のうち私が、おもしろい、参考になる、と思った意見は、

*自宅の場合、ルータやソフトを使用して子供に見せたくないページについては閲覧出来ない様にする(フィルタリング)。

*管理できるに決まっている。というか管理しなければならない。このテーマでは「小学生」ということなので、当然ながら大人が見ていなくても安心して使わせることができるような年齢ではない。
親がパソコンに詳しくないなどの理由で、管理できない可能性があるならば無条件で与えてはいけない。

*管理できる!って言うか管理しなきゃ!
顔の見えない悪意。無責任の悪意。
自分の欲求を満たすための悪意・・・
自分子供の頃に今の状況だったら?・・・やはり怖いと思います。
インターネットで「世界」は広がると思うがその「世界」にはリスクもある事を親は認識して子供を守ってあげて欲しい。

*確かにネットは便利なものではあるが、小学生以下の子供が
一人で見るものではないと思う。子供には刺激が強すぎるからだ。ネット、特に掲示板等は一日中誹謗中傷が垂れ流されている。未だ判断力がついていない小学生が強い刺激を受け、影響されるのは当然の結果である。ネットは自己責任を意識できる年齢までかかわるものではない。PCにはパスワードでロックを掛け、ネットに関わる時は親等が付いていた方が良いのではないか?

以上、まったく、同感です。

また、こんな意見も素敵ですね。どんなご職業の方かなどと、おもってしまいます。

 *倫理観のまだ育ちきっていない子供たちにチャットをする、メールをやり取りするという事を100%承認するという親の姿勢は危険です。子供はメール中毒に陥りやすく、ネット上のエチケットも道徳観もはまればはまるほど消去されていきます。

 自分が自分として(匿名でなく)人前できちんと意見を述べられる人でないと、チャットや掲示板といった閉ざされた世界では自己制御できません。もともとチャットはメールはリサーチャーの為の研究を助けるコミュニケーションの道具として始まったわけで、それが一般のチャットを必要としない人々に開放となり、毎日顔をあわせる仲良したちとの無駄話にまで使われるようになった事がパンドラの箱となってしまったのではないでしょうか。
 書簡を書いたり、せめて電話で話したりするならば、言ってよい事と悪い事を推敲するプロセスは保たれているはずです。

 チャットは心に浮かんだ全てを投影してしまう危険性のある道具であり、未熟な若者にとってはアルコールやタバコと同じ類でしょうか。

 その他のA意見として「孫もネットを4歳でやっている。あまり早いので吃驚している。私も老年になってはじめたが、親も出来る人はいざ知らず、パソコンに慣れておかないと子の管理は出来ない。」とかCと答えた人でも「管理しないとだめです。
あまりにも身近に手軽に容易にネット接続できる環境になってしまったからです。ちょっと前なら通信料を気にしたり、言葉を選んだりしていました。今はどこのサイトも画面の向こうを思いやる気持ちが見られません。好き放題やりたい放題です。
大人でさえ失敗しやすいメールやチャット小学生レベルの文章力で書き込みやチャットをすれば喧嘩になるのはすぐに想像できる事態です。ネット上には有益なものと同時にエロも氾濫しています。子供に触らせるなら、保護者は通信履歴を管理するべきです。そして、ネットワークに対して知識を持つべきです。といっても、トラブルシューティングすらできない大人が大半だと思いますが・・・ 」

 さてBグループの意見だが、親にはインターネット理解力や勉強時間がないからダメだという悲観的ムードだが、たとえ管理意欲と能力があってもパーソナル・メディアは管理が基本的に難しいという次の意見が興味深い。「親の目の届く所でネットをおこなう環境でないかぎり不可能。子供が自分の部屋でネットをできる環境があれば管理は全くできない、ポルノやあらゆるプロパガンダを見放題。」というのが現状でしょう。同感、とくに携帯インターネットではお手上げですね。子育てが難しい時代です。
それから職業:ネットゲーマーという人が
「管理する・しないとは別に、ネットの世界も現実の世界とさほど変わりは無い(規律・ルールは一緒)ということを教わらなければいけません。正直、ネット世界(だけでなく、今のテレビ・ラジオも含む情報世界)でも情報を遮断(規制する)ことはほぼ不可能に近いです。それだったら、情報をどうこう言うよりも、情報を吟味する(必要な情報を選ぶ)ことが大事なことでは。長崎の同級生殺害事件で、自分がはっきり言いたいことは「情報に溺れるな!混乱して溺れたから今回の事件になったのだ!」と声を大にして答えます。これといい、先週の放送部占拠といい、まったく同じですね)」なるほど、、。

 最後にこんな発想も。

 「子どもがホームページを作る場合は、子ども専用のサーバーを使うようにした方がよいと思います。
こんな時代なので、情報を閲覧するのは規制することが出来ないと思いますが、一方、子どもがホームページをつくるというのは、世界中に情報を発信出来るということでもあり、子どもには責任が重すぎると思います。
  したがって、大人の管理者が巡回するシステムの子ども専用のサーバーを、各地の大学教育学部、教育委員会、あるいはレンタルサーバー会社等がつくるべきでしょう。」

 今回のテーマ設定では、管理できるかどうかという視点以外に、管理すべきかどうかを問わねばならない。すべきと考えて、しかしできないとなれば子どもと話し合って、買い与えない。それでも子供が欲しいというのなら、そこでルール、約束ごとを取り決めて子供の自覚的協力で利用をすすめる。すでに買い与えている親には、、私は「今からでもできることはしなければ、」と主張している。アメリカの親たちは、クリントン大統領が「小学校からインターネットをさせる」と言い出したら「大統領待った」と言った。「インターネットの世界は子ども達に良くない状況になっている。もしこのメディアでうちの子が悪くなったら、大統領貴方、うちの子に責任とれますか」といったそうである。さすがインターネットを産み出した国の親達、と思うのだが、いかがでしょう。

 ともあれ、日本でももっと議論が子供のためにも活発化しなければ、、。とはいえ、こういうネット上での議論では、子供も見ているので、「馬鹿げている。テーマで「・・・思いますか?」では無く「真剣に取り組み管理しろ!」と怒鳴ってみろ!」とか言葉使いが荒い老人?も混じっていて、気になる。もっと汚い言葉も多いぞというが、ご老人、もう少し品良くいこうよ、と言いたくなる。

 ま、今回は論評というより「ひとりごと、つぶやき」にちかいものでした。