ニッポン子どものIT利用
-技術は先進国。しかし憧れの的ではない?

 さる5月24日。文部科学省からの依頼があり、日独交流事業で来日中のドイツ青少年指導者達(メディア教育など)に日本の子ども達のIT利用の現状、とくに携帯電話からのインターネット利用について解説し、意見交換を行った。

 まずインターネット端末機としての携帯電話の技術進化に注目が集まった。「モバイルフォンはそんなに便利でオモシロイことまでできるようになったのか!」という驚きである。
 しかし「技術は確かにすごい。いずれドイツの青少年もこういうものを使うようになるでしょう。しかし子どもの教育から考えると、ドイツへの上陸は一日でも遅らせたい」という本音が語られた。

 よくモバイル・インターネットの大普及で「日本はIT先進国になった」といわれるが、先進国というのは何だろうか?技術が進み、企業の利益が急増したから先進国なのか?ようするにこれで儲かれば成功者、先進者ということなのか。どうも我々が使う「先進的」という言葉は、目先の実利に関係しているようだ。しかし先を行っているといっても、その行き先が良い方向なのか悪い方向なのかが問題になる。ドイツ人の人たちや昨年前橋に来てくれた米国のポーリーさん達の日本の子ども達のIT利用を見る眼差しは、「良い方向に向かって先頭を切っているな」というものではないようだ。つまり日本は「ああいう進み方をしたい」と言われるような憧れの対象ではないと思えてきた。
 例えば今回、ドイツの人達に最新型の携帯電話を小学生までが使いはじめたと話たところ「必要もないのに、そんな大変なことになっているのか」と同情されてしまったのである。

 実は、私も知らなかったのだが、都内の小学校では6年生でケータイ所持率が50%を越えたらしい。このことは先週の6月3日に東京で行われた教育エキスポのパネルディスカッションで教えられた。この数字を出した小学校ではケータイを安全に使う教育をドコモの教材で実施しているそうだが、社会常識のベースが出来ていない子どもよりも親の方こそ啓発するべきではないのか。子どもだけでは不十分だし、危ないと思う。
 実際にこのシンポジウムでは、今後子ども達のケータイ利用では保護者を含めた地域ぐるみの啓発活動への取り組みが必要という点で意見が一致したのである。

 いずれにせよ、本題に戻って言えば、日本が本当にモバイル・インターネットの先進国と胸を張って言えるようになったり、外国からも「日本のようになりたい」と憧れのまなざしを向けられるようになるには、今のままではいけないと言わざるをえない。言葉を換えて言えば、やみくもにケータイ利用層を小学生にまで広げるだけでは「日本のまねはしたくない」と言われてしまうのではないかと心配せざるをえない。