7月6日つくば教員研修センターでのご質問にお答えします

 7月6日つくば教員研修センターで研修講師をつとめました。このつくばの研修センターには全国から教員が集まります。私どもは以前からから毎年お話をさせていただいております。会場でのアンケートから、参加された多くの先生方が子どものインターネット問題、特にケータイ利用問題について心配されていることがよく分かりました(回答中85%の教師が心配と回答)。わずかな時間の中で様々な心配事やご質問などを頂戴しました。その中から多くの先生方が共通に心配されていることや疑問に思っていることを中心にお答えさせていただきます。

質問:本来のケータイインターネットの使い方を示す教材を紹介してください(小学校教師)

回答:携帯電話からのインターネット利用はそもそも高校生のポケベル遊びの効率化から発送・開発されていて本来的に教育目的で設計されたものではありません。(ケータイリテラシー NTT出版を参照)
 インターネット利用の基本は、少なくとも発達段階的には、高校生まではディスクトップパソコンです。携帯端末からはインターネットのウェブ利用の本来的活用が難しいことはネット利用効果研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン博士の研究からも分かります。
 (詳しくは、メディア学校コラム2011年6月16日「スマートフォンで子どもの能力を伸ばせるか」を参照)

質問:公開フォーラムやシンポジウムの参加ということに興味を持ちました。子ども達が参加できるようにするためには、授業の中で取り入れることもできると思います。何か良い実践例がありましたら教えて頂きたいと思います。(指導主事)

回答:日本でのネットフォーラムの実践例を私は知りません。米国ではコンピュータゲーム中毒というテーマ設定で高校生以上の未成年者に参加を呼びかけていた事例を知っています。教師が中・高生など生徒の年齢に応じて実験的、模擬的テーマ設定の実験をされるのも良いのではないかと思います。

質問:ITの世界は新しいカタカナ語がどんどん生まれています。保護者にわかるように定義し、説明する必要が出てくると思います。(中学校教師)

回答:子どもを守り育てる保護者や教師の方々が、子どものネット遊びを理解したくても用語が分からなくて困るという声をよく聞きます。専門的用語集も少数出ていますが、青少年メディア研究協会では市民インストラクターの自習用として問題集を発行しています。 忙しい親や教師自らがヒマな時にクイズ形式で知識が得られます、ご希望の方にはお分けします。(お申し込みはメールで)

質問:情報モラル教育で警察の方に来ていただいて講義してもらったが、毎回同じで工夫が感じられない。(中学校教師)

回答:業界が行っているケータイ安全講座も含めて子育て教育の責任を負う親や教師の視点からの教材作りがモバイルネット大国の日本では、なかなか出来ないのが現状です。特に警察も業者も「ペアレンタルコントロール」の原理、概念の理解がないため説明に力がなく、プレゼンの内容に深みや現実味が出ていないのが現状です。

質問:なぜ、ケータイにフィルタリングが出来ないのか(小学校教師)

回答:携帯電話発売当初、業界は携帯電話へのフィルタリング・サービスに無関心でしたが、最近はフィルタリングサービスを始めるようになりました。但し現状のフィルタリングサービスは抜け穴も大きく保護者にとって安心なフィルtくぁリングとはいえないのも事実です。

質問:石川県では中学生にケータイを持たせない条例を作ったようです。現状では学校地域の力としてできることを注意を呼びかける、学校への持込を禁止するまでです。国として法を作り規制することは出来ないでしょうか
 (小学校教師)

回答:例えば未成年者にインターネットができる携帯電話を売ることを禁じる法律を国が作ることなど、現在では民論の形成も出来ないし、とても難しいのではないかと思います。

質問:もっと規制を国が法的に行うことができないのか?(中学教師)

回答:例えば、サイト業者のサイトを見守ろうとする親や教師を締め出す商法への規制という意味なら、今のところ国、政府の意思や能力さらには世論の形成レベルからして無理だと思います。

質問:日本ではケータイの設計がペアレンタルコントロールを含んだものではないのでフィルタリングが普及しないというお話でしたが、これから変えられませんか?法律で義務付けるなどできませんか?(高校)

回答:NTTドコモ社がケータイ(iモード)を売りだした時フィルタリングの利用を考えていなかった。それは同社がペアレンタルコントロールの概念を理解していなかったためと思われます。しかし、下田が警察庁の委員会などを通じてフィルタリングサービスの必要性を訴え最終的には社会的に未成年者の携帯電話からのインターネット利用にはフィルタリング利用が義務付けられました。しかしそのフィルタリングサービスの内容には問題が多いことはマスコミでの報道でも知られているところです。

質問:子どものケータイからのインターネット利用についてフィルタリングを義務付けされているが、実際はフィルタリングが殆ど機能していないため、相変わらず事件に巻き込まれている

回答:そのとおりです。問題はEMSという業界組織がブラックなサイトを健全と認定してフィルタリングからはずしていることです。ここで子どもの性被害が多発しています。下田の新書本(子どものケータイ-危険な解放区 集英社)に詳しく書いていますのでお読みください(立ち読みできますメディア学校 資料紹介)

質問:今後学校裏サイトなどの有害なサイトが広がっていく心配があります。どのような手立てでそれを防ぎ、子ども達を守っていくか考えなくてはならないと思います(教育委員会関係)

回答:高崎市教育委員会では保護者と学校やNPOが協力して、この問題に取り組む実践をしています。青少年メディア研究協会にお問い合わせください。(http://www.npoams.org/

質問:本市では、インターネット相談窓口を設け、保護者、学校、子ども達から相談を受け対応しております。しかしそれだけでは足りないと感じています(教育委員会関係)

回答:同感です。最終的には、わが子のネット利用を監督、指導できる保護者を増やし学区の負担を減らす社会的仕組みづくりが必要です。

質問:携帯(ゲーム)依存の子が不登校になり、家庭内暴力に発展し、一時保護してもらった経験があります(教育委員会関係)

回答:こうした現象は多々見られます。基本的にコンピュータゲームの魅力はデジタルドラッグ効果とも言われます。オンラインゲームの魅力から子どもばかりか大人でも依存症になりやすく、性格が変わるなど人格破壊的く影響をもたらします。(メディア学校コラム2011年5月「コンピュータゲームがもたらす子育て上のリスク」参照)

質問:経済界への商法改善は期待できないのでは?(小学校教師)

回答:現状ではその通りです。しかし、出来ます。消費者である親の声を集めることが出来れば可能です。

質問:書き込み等についてはプロバイダーを通じた削除要請をすることができますが、事件性が無いと誰が書き込んだのか特定が難しい時があります。こういう場合はどのように対応することが望ましいのでしょうか(小学校教師)

回答:ケースバイ・ケースです。原則として、被害届(訴え)があれば警察が動いてくれます。それでない場合は法務局に相談されるのも手です。

質問:いま、子ども達の中でオンラインンゲーム(アメーバピグ)が流行しています。自分も勉強不足でどんな怖さがあるか具体的に良く分かってない部分があるので教えてください(中学校教師)
 学校の担当者が監視のためにモバゲー等に入るときの入り方と、どこまで入っていいか。ゲーム代等は定額料金に含まれるのか等、全く知識が無いので困っている。(中学校教師)

回答:私どもの講習会や市民インストラクター養成講座では参加者が自分のケータイでネットの遊び場に入り、ガイド付きで現状を観察するという講習会をしています。(詳しくは「下田真理子の演習を含む講習会を参照」
 とにかく、大人が入らない、入れない場所(ネットのサイト・お店)、つまり、大人の目の届かないところで遊んでいることで子どもを注意出来ないことが危ないのです。
 私達はこれまで子ども達が、どんな場所で、どんな遊びをしているかを把握し、危険に会わないように注意してきました。そのことが、最近のインターネットの遊び世界でできなくなっていることが問題です。子どもに遊びを提供して儲けている会社が急増しています。子どもにとって面白い遊びを提供すれば儲かるのです。それらの遊び(コンテンツ)を吟味し、評価することが必要です。
 モバゲーなどEMAの認定サイトはEMAモバイルhttp://www.ema.or.jp/ema.htmlから入れます。サイト内を見て歩く、入会登録をして利用してみるできるだけ深いところまで、大人の目線で(子どもにとって危険はないか)見ていただきたいとおもいます。
 サイト内で遊ぶゲームなどはどのサイトも無料で提供しています。但し、しばらく遊んでいるとアイテムがほしくなるように作ってあり、アイテムを買うことになります。代金は通信料金と合わせて徴収されますので気軽にどんどん買ってしまうことになるからご注意ください。
 携帯電話のパケット定額に入っていれば通信料金は定額の範囲ですが、アイテムの購入は別料金です。ゲームの利用料はモバゲー、グリーなど無料とうたっているところではかかりません。

質問:プロフ、リアル、フリーメールなどの疑似体験ができるソフトウェアがほしい。(高校)

回答:青少年メディア研究協会のホームページhttp://www.npoams.org/から「ネットのリスク体験学習館」をご利用ください。CD版もお分けしています。

質問:今は本当に自主規制するしかないのだが、問題を起こす子どもの保護者は家庭教育力が希薄なため規制が必要な子が放任になってしまっている。やはりこのことから子どもを守るのは法整備以外にないのではないかと思ってしまう。そんな中で学校で出来ることはどんなのことなのかそれを教える教材(学年集会で使えるDVDを教えてほしい(小学校教師)保護者への啓発を促す教材を紹介してください(小学校教師)保護者の啓発用DVD(動画)PTAの集まりの場で使えるものがほしいです(小学校教師)

回答:このようなご要望にお応えするために DVD「子どものケータイ利用が問題を生む理由」(約17分)をお分けしています。また、啓発用冊子「知った人から伝えよう―ペアレンタルコントロール」もご利用ください。
お問い合わせは青少年メディア研究協会http://www.npoams.org/へ