子どものネット利用の見守り注意のポイント

生活の異変とネット利用の関係について

 バージョン1のケース(子どものネット利用リスク対策編)では、わが子のインターネット利用の見守りは、大きく2つの観点から行われる。第1は悪いネットの使い方をさせないために作られた親子の約束(ルール)に反していないかどうかチェックするという観点からの見守りで、これは約束、ルール作りがしっかりできていれば実行は容易である。

生活の異変から見抜く努力を

 もうひとつの見守り方は、子どもの日常生活の好ましくない変化から、子どものネット利用の実態や問題点を探り出す間接的なネット利用実態把握の方法である。例えばファミコンゲームの全盛時代に、生活の乱れが親達の注意を引いた。子どもが朝なかなか起きないとか学校に遅刻するようになる等、子どもの生活リズムの乱れが目に付くようになり原因を考え始める。あるいは学校の先生から宿題の提出ができなくなったり忘れ物や授業中の居眠りが増えたという連絡があったりすれば、深夜までの自室でのゲーム機利用が学校生活の乱れの原因になっているのではないかと保護者は疑い、子どもに問い詰めたり、反省をさせたり、時にはゲーム機を取り上げるなど指導したりするようになった。それと同じことをインターネット時代にもすればよい。いやインターネット時代のオンラインゲームあるいはネットゲームの流行状況下では、親はファミコンゲーム時代よりも真剣に、子どもの生活の乱れの背後にネット利用があるのではないかと考えて、早めに手を打つべきだろう。

 私がそう言う理由は2つある。ひとつはメディア利用の依存性はオンラインンゲームあるいはネットゲームのほうがファミコンゲームより強く出てくるからである。例えば、ネット上で、仲間と共に行うゲームの場合、自分のペースだけでネットゲームを中止することが難しい。あるいはパソコンやケータイなど子どものインターネット端末機にゲームコンテンツを提供しているネット業者の巧みなビジネス戦略(ネット商法)が働くことから子ども達が長時間ンインターネット上でゲームをさせられるようになった。

 そのためインターネット時代ではテレビやファミコン、ゲーム時代よりも強く「子どもの生活の乱れの背後にネット利用アリ」と疑わなくてはいけない。いや問題は、ネット依存(長時間のネット利用)による生活の乱れ、あるいは学業の低下というリスクどころの話ではない。

 過去10年間に、日本の警察は「少年非行、犯罪の影にケータイ(インターネット)あり」と認識するようになった。携帯電話という名のインターネット端末機を使えば、現代の子どもは、それ以前の子ども達が、したくともできなかった、あるいは「させてもらえなかった」ことが易々とできるようになった。例えばワイセツ、誹謗中傷、デマなど有害情報の受信、発信から薬物、凶器など危険物入手さらには売春、窃盗など犯罪行為も簡単にできてしまう。

 ケータイ以前なら、大麻を吸いたいと思っても、どこで入手できるかわからなかったが、今や手の中に入ったインターネット機を使えば、いつでもどこにいても薬物販売者を見つけ、お金さえ振り込めば、宅急便で自宅にいても手に入れることができる。お小遣いが不足していれば、ネットの闇のアルバイト・サイトを開いて、短時間で大金を得ることもできる。

 例えばブランド品のバッグを手に入れたい女の子であれば、ネットの出会い系サイトや健全サイトという名の非出会い系(プロフ、SNS)サイトを使って自分の性を買ってくれる大人を簡単に探し出し、身体と引き換えに多額の小遣いを手に入れることができる。

 過去15年、そのように有害情報入手から危険な行動に出る子どもが当たり前のように増えてきた。インターネット時代の少年少女達のそうした非行犯罪行為の広がりに教育界は手をこまねいてきた。しかしもっとも注意すべきは、ケータイを買い与えた親の不注意、知識不足が出会い系から非出会い系(健全サイト)利用の事件を広げているという事実で、この状況は依然続いている。

 非出会い系サイトの業者は、「フィルタリングやゾーニング(危険な大人と子どもの出会いを防ぐ)などをしっかりしているから安心してくれ」と親に呼びかけるようになったが、日本の業界のフィルタリングやゾーニングが不完全なことを保護者や教員に十分説明せず、それもあって保護者の子どもを守り育てる力(ペアレンタルコントロール能力)も向上しないという悪循環が引き続いているのだ。

 このインターネット時代の悪循環を防ぐ努力の第一歩は、子どもにインターネットをさせる保護者の「わが子を自らの手で守る能力の向上」しかない。フィルタリングやゾーニングのことがよくわからなくともわが子の育ちや生活の異常、異変とインターネット利用の関係を考える力を鍛えることはできるはずだ。

 繰り返すが、インターネットはこれまでのTVや本のように単に情報を伝えるだけの道具ではない。子どもが自分に必要と思う人間関係を作る全く新しい道具、メディアなのである。そのインターネットが子どもの育ちや成長にどのような影響をもたらすのかを深く知るためにも、子どもの日々の暮らしの変化や異変とネット利用の関係を察知する感受性と思考、洞察力を日本の親達が高めねばならない時代に入った。