日本の子どもたちのネット利用問題の行方は?

 あけましておめでとうございます。私たちは、全国の志を同じくする皆様と共に今年も、日本の子どもたちのネット利用問題に取り組みます。我々の観測では、これから数年が、子どものネット問題の山場になると考えます。昨年は、ケータイからスマートフォンへの移行期だったと思います。携帯電話の販売店では、ケータの姿がどんどん寂しくなり、各社スマートフォンの売り込みを競い合ったのが2013年でした。スマホ、タブレットは、どんどん売れました。学者の中には「スマホはケータイ以上に高機能なインターネット端末だからケータイ時代のような問題は起きない」と雑誌などで公言する光景まで出現しましたが、私どもは、それほど甘く見ていません。
  昨年9月に「液晶画面に吸い込まれる子どもたち」という本をカトリック教会(女子パウロ会出版部)のお力で出版しました。その中で「スマートフォンはケータイ時代の負の遺産(ネットいじめなど有害情報発信や危険な出会いなど有害情報利用)を引き継ぐとともに「新たにネット依存・中毒という厄介な問題を広げる」と訴えました。
 要するに、スマホ時代の子どものネット利用問題はケータイ時代よりも、広く深くなると見ています

 何を根拠にそう考えるのか?

 前記の、私たちの共著にも書きましたが、我々の心配は次の4点です。
 1、ケータイ時代にかろうじて着手された未成年者による有害情報の受発信対策が、スマホ時代に無効化されたこと。具体的にはケータイ時代の有害サイト規制(有害サイトを遮断するフィルタリング利用の義務化など)が、スマホでは適用されないことに加えて、スマホのアプリの評価や有害アプリの利用制限が不十分なことなど。
 2、サイトに代わるアプリ利用というスマートフォン時代のネット利用の変化と相まって、保護者のペアレンタルコントロールの意欲と能力に子どもたちのネット利用変化が追いつかなくなっていること。
 3、ケータイ時代のリーダー的企業であったNTTドコモに代わるライン(NHNジャパン)の台頭(リーダー交代)により子ども達のネット利用環境が一段と閉鎖的(クローズド・ユース)になり、それゆえネットいじめ、危険な出会いなど(有害情報の受発信)のリスクが高まる環境になっていること。
 4、ラインのタイト・コミュニケーションサービスの急速普及からケータイ以上のネット依存傾向が見えてきたこと。

 スマホ・。タブレット利用のネット依存に絡めていえば、タッチパネル方式の操作方法(GUIの進化)などから、ネット利用の低年齢化が、ケータイ以上に進み思春期以前の乳幼児からの子どものメディア利用管理(ペアレンタルコントロール)の必要性が高まっているものの、社会の意識が追いつかない。

 明るい材料もある

 以上の理由により、スマホ時代の子どものネット利用問題の行方には、とても楽観的になれないのですが、個人的には明るい材料、励ましの要素も見えてきましたので記します。
 1、もっとも大きな励ましは、カトリック教会のご尽力で出版した前記「液晶画面に吸い込まれる子どもたち」が版を重ねることができ、さらに図書館協会や学校図書の選定本になったという女子パウロ会出版部からのお知らせが入ったこと。
 2、もう一つは、私たちが過去10年間にわたり訴え続けてきた「ペアレンタルコントロール」という考え方への関心が徐々に高まってきていることです。

 例えば、ゲーム業界はもとより子どものスマホ利用で発生する高額請求トラブルの増加に取り組む国民生活センターが子どものスマホ利用問題に絡めて「ペアレンタルコントロールの必要性」を消費者であり、ネット時代の子を守る家庭に呼びかけを始めたことなど、私たちの取り組みを励ましてくれるような動きも出ていることを記して、まだ希望もあると考えています。2014年も各地の志を同じくする人々と共に歩み続けたいと思っていますので、よろしく願い上げます。