手口多様化、最近の援交事情

相変わらずの出会い系サイト利用

 2006年の携帯電話業界は、新規参入等で競争が激化するなかワンセグやら子ども安全、安心ケータイの発売などマーケット情報は盛り上がりをみせている。最近の子どもを狙う卑劣な犯罪の横行で不安を募らせる保護者達の心理を衝いたキッズ携帯も売れ行き好調なようだ。しかしその販売方法は、持たせて安全とはいえないインターネット携帯を小学生にばら撒く、いわば「安全、安心偽装ケータイ販売」とでも言うべき実態がある。(これについて群馬では市民販売実態調査を進めているので次回にも紹介したい)

 さてそうした子どものことを本気で考えているとは思えないケータイ狂騒のなかで、2006年に入っても援助交際という名の少女売買春はいっこうに減衰する気配がみえない。現に福岡や長崎、東京、宮城、静岡では女子中学生や女子高生の援交売春や恐喝事件が次々起きている。例えば年明けの2006年1月10日 長崎県教育委員会は、児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕、略式起訴され罰金50万円の略式命令を受けた諫早市の小学校教諭(45)を懲戒免職処分とした。 教諭は昨年10月に長崎市内のホテルで、高校1年の女子生徒を買春したとして逮捕された。また仙台では15歳だった女子高生を買春したとして児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで宮城県の石巻市立病院循環器科部長の男(46)=仙台市太白区=を逮捕した。福岡では県警女子高生に乱暴したとして、RKB毎日放送(福岡市)のスポーツ担当記者、北村浩之(29)(福岡市西区)、ガソリンスタンド店員田島敏男(39)(福岡県大野城市)の両容疑者を、集団強姦、監禁、わいせつ目的誘拐の疑いで逮捕した。調べによると、両容疑者は共謀し、昨年11月15日、出会い系サイトで知り合った山口県下関市の女子高生(17)(当時2年生)を呼び出して福岡県大野城市のホテルに連れ込み、「叫んだら山に埋めるぞ」などと脅し、約2時間にわたって乱暴した疑い。女子高生が数日後、県警筑紫野署に被害届を出した。ちなみに両容^者は、若い女性に乱暴することに興味のある者が集まるインターネット上のサイトで知り合った。犯行までに1回会っただけで、県警はこの時に実行を決めたとみている。

 そうしたなかで3月には、なんと東京大学先端科学技術センターの多久島裕一助教授が出会い系サイトで知り合った中学3年の女子生徒を買春し逮捕された。このところ出会い系利用の大人の逮捕者の職に教員やら公務員などが目立っているのはなぜだろう。

  それはともかく、出会い系サイト利用の援助交際は幾分減少に転じたものの、最近では、それとわかる出会い系サイト利用よりも多様な手段の利用が気にかかるようになってきた。例えばあのテレクラ利用が携帯電話普及で復活しつつある。この他、モデル募集や「裏求人サイト」とかメル友募集の掲示板とサブアドレスの取得などによる出会い実現などのニュースが今年2006年に入ってから次々報道され、新しい動きが窺がえる。(サブアドレスの取得などの問題についてはドコモ・モバイル社会研究所と下田研究室の共同調査データをもとに次回に解説します)

テレクラも盛んに

 まずテレクラ利用の件では先月から浜松の市民や新聞記者からの問い合わせ、取材がねちずん村にもあった。(新聞2社の若い記者からの度々の取材は、結局記事にならなかった)ちなみに浜松市はねちずん村の村長やスタッフが度々講演やセミナーで出かけたところである。

 浜松市の事件は2005年12月に浜松市内で高校1年の女子生徒と中学3年の女子生徒が女子中学生(14)に「彼氏と付き合った」などと因縁を付け、2006年1月下旬ごろまでの間に数回にわたり、現金十数万円を脅し取った疑いで表面化した。被害者の女子中学生は児童買春の相手を務めることで得た金を、脅されて払う費用に充てていたらしい。

 本事件では、結局女子中生(同じ中学校の生徒)9人や買春した会社員ら4人が逮捕される騒ぎになった。浜松中央署と県警少年課は中学2―3年の9人を補導し会社員ら4人を逮捕した。児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されたのは、掛川市水垂、会社員(41)、浜松市有玉台、会社員(37)、浜松市佐鳴台、飲食業(43)の3容疑者。県青少年環境整備条例違反の疑いで逮捕されたのは、浜松市富塚町、工員(20)。

 調べでは、児童買春の疑いで逮捕された3人は昨年12月下旬から今年1月下旬にかけて、それぞれテレホンクラブを通じて知り合った女子中学生が18歳未満と知りながら、浜松市内のホテルで買春した疑いという。3人は女子中学生にそれぞれ3万円を渡していた。補導された生徒らは昨年夏ごろから児童買春の相手をするようになったとみられ、男から1万―4万円の現金を受け取っていたという。

 この事件はケータイブームが起きた2000年から2001年にかけて起きた埼玉県の女子高生売春グループの事件を想起させる。

 ねちずん村に寄せられた現地からの情報では、中学少女達の携帯電話による売春サークルに関係した生徒の数は9人ではすまない。もっと多いと市民は考えているようだ。新聞報道では、学校側は「事実を把握していた」、と述べている。補導された生徒が通っていた中学校では1月中旬、恐喝を受けていた生徒の様子がおかしいことに教師が気付き、事情を聞いて分かったという。浜松の生徒指導の教員の中には女子生徒らが居酒屋などで派手に遊んでいる現場を補導しているが、このとき「化粧などをするととても普段見慣れた女子中学生と思えない」と最近の子ども達の変化を嘆いている。ともあれ恐喝を受けていた生徒を含め補導された生徒たちは、昨年夏ごろから大人の買春の相手になっていたということだから学校側は予兆をつかんでいたふしがある。事実校長は「事件の事実は把握していたが、他の生徒への影響もあるため、慎重に指導と対応をしてきた。」と新聞で述べている。このような事件が起きると教育関係者は「悲しい」とか「生徒たちを動揺させたくない」と語るが、生徒を非行に駆り立てる情報メディア環境の在り方に学校として保護者や携帯電話業界に苦言を呈してもよいのではないか。それと情報化時代の生徒指導のあり方についても改善策を打ち出すべきだろうが、依然として呆然自失のように見える。

闇の職業紹介やモデル募集サイトも

 テレクラは言ってみれば古典的手段だが、職業紹介を装う闇のサイトにもご注意といわなければならない。今年3月大阪府警少年課などは児童福祉法違反容疑で大阪府寝屋川市の風俗店経営の男(37)ら4人を、職業安定法違反などの容疑で福岡県那珂川町の無職の男(30)ら2人を逮捕した。調べでは、風俗店経営の男は同府守口市で無店舗型風俗店を経営。昨年4月から10月までの間、滋賀県甲賀市の無職少女(17)を雇い、約250人の客を相手にわいせつな行為をさせた疑い(17歳少女にデリヘル嬢させる…半年間で客250人 )無職の男らは昨年4月、少女を風俗店経営の男に紹介したほか、犯罪収益である風俗店経営の男らの売上金の一部約120万円を受け取った疑い。客が支払った金額の5割が風俗店経営者ら、2割が無職の男らの取り分だった。ちなみに少女はインターネットの「裏求人サイト」を通じ無職の男の仲間と知り合ったという。

 闇のサイトはいかにもブラックな印象であるが、モデル募集サイトは一見すると問題ないように見えるので要注意だろう。2005年から2006年にかけて撮影モデルを希望する女性と撮影する男性が情報交換する専門サイトが増えている。利用者のなかには18歳未満の少女の書き込みも目立つ。この種のサイト利用では、モデル名目で少女を誘い出し、少女と性交渉したり、ホテルなどで強引な撮影をしたりする事件も起きており、ネット上でのモデル募集が、児童買春などを誘う書き込みを禁じた出会い系サイト規制法の抜け道に利用されているとして、警察が警戒を強めているのだ。

 例えば1月に女子中学生を買春したとして日本経済新聞名古屋支社総務グループ担当課長、加藤泰生(かとう・たいせい)容疑者(40)が逮捕された。調べでは、加藤容疑者は昨年1月15日夜、東京都新宿区百人町のホテルで、当時中学3年で15歳の女子生徒が18歳未満だったと知りながら、現金5万円を渡して買春した疑い。加藤容疑者は、ホテルの室内にカメラやビデオカメラ5、6台をセットし、約5時間もわいせつ行為を撮影していた。ちなみに女子生徒は携帯電話のサイトで撮影会モデルに応募し加藤容疑者と知り合った。

 この種のサイトでは、撮影者側が制服などのコスチュームを希望、少女側から水着や下着姿などの格好と報酬額を提示するなど問題のあるマッチングサービスが行われている。昨年、神奈川、奈良県警などが摘発した児童ポルノ製造販売事件では、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などで逮捕・起訴された男(公判中)が、サイトに「モデル募集」と書き込み、報酬5万~10万円を提示して、18歳未満の少女100人以上を集めていた。子どもへの悪影響からすれば出会い系サイト以上と言ってよい。こうした撮影会では少女に淫行(いんこう)さたり、嫌がる少女を暴行する様子を撮影しビデオで販売することもある。ちなみにこの種の画像はネット上にも流出するため、少女たちの被害画像は“回収不能”になる。

 子ども達は、インターネットのモデル募集掲示板に「ヌードなし、1時間5000円以上」などと書き込むが、結局はお金を餌に大人の悪巧みの被害者になっている。問題は親にもいえないために表面化しないことだ。