新たな密室的交流サイトやアプリの長時間利用がもたらすリスクについて

 

 近年中高生の間で人気のラインという無料のアプリ利用で誹謗中傷という言葉の暴力やネットの長時間利用に関する問題が関心を集めつつある。『ラインで悪口を言われている』とか『いつまでもラインをしている。止めさせたいけど・・・』という声も教師や保護者の間から出てきた。

 スマートフォンの前の携帯電話の時代でも無料の掲示板サービス(学校裏サイト)利用で同じような言葉の暴力がはびこり、ネットいじめや現実に出会ってのケンカも起きていた。ラインというスマートフォン向けアプリでは、悪口を書かれたという言葉での心の傷つけあいから10代の女子による殺人事件まで発生している。ラインと学校裏サイトはウェブ・サービスの種類という点で違いがある。しかし、類似のリスクがある。ラインはチャットで、学校裏サイトは電子掲示板の利用という違いである。

 中高生の間で人気を集めた2つのサービスは『密室的(クローズド・マインド)な交流サービスという点で類似性がある。同じ学校に通い、趣味や意見が同質な(気の合う仲間の)中高生達が親や教師などに邪魔されずいつでもダベッたりできる『隠れ家』としての学校裏サイトで書き込みをしたりしているうちに、面白半分、ストレス解消、退屈しのぎの誹謗中傷の書き込みをする。その隠れ家遊びが、トイレの中でも寝床の中でもできて深夜まで続く。この掲示板の仲間に加わらないと、仲間はずれにされるとか、自分がターゲットになると不安になれば夜中も仲間の書き込みを見ることになる。学校裏サイトのような電子掲示板はもともと時間があるときに読んで、コメントすればよいくらいのゆるい(ルーズ)なウェブ・サービスなのに、学校裏サイトのように掲示板利用は見たり書き込んだりして参加している「タイトな(互いにきつく縛りあう不自由な)ネット利用」になってしまった。

 ケータイ時代のこのクローズド(閉鎖的)で、タイトなネット利用が、スマホ時代の人気アプリ(ライン)で、さらに互いに縛りあうタイトなネット利用して出現した。

 ラインのサービスはチャットであるから、電子掲示板以上にタイトなネット利用になる。しかも学校裏サイト時代のように特定の1、2のサイト利用にとどまらない。趣味のあう、面白そうな複数のチャットグループに入るのが当たり前という状況になっている。そうなれば、ネット利用に費やす時間は、学校裏サイトや従来の交流サイト以上に長くなる。スマホのラインでのロス・タイムは、ケータイ以上のレベルになる恐れが十分にある。

 群馬大学で平成2年度に『情報社会のいじめの問題』というシンポジュームを開き県内【伊勢崎市】の小中学生を対象のネットいじめに関する実態調査を行った。その折、子ども達がどんな種類のウェブ・サービス機能を使ってネットでのいじめをしているかを調査した。その時の調査ではウエブ・サービスの代表とも言うべき電子掲示板や電子メール機能を押さえて、チャットやリアル(今ならツイッターに相当の機能)を使った他者への言葉による攻撃が多いことも判明している。

 ラインの封鎖的なチャット・サービス利用ではネット依存によるロス・タイムの増大と、言葉の暴力の広がりを保護者や教師は警戒しなければいけないだろう。そんなことも考えずに、中高生など生徒に「ラインを使え」と叫んでいる冒険の教師や教育委員会は、大丈夫だろうか。