「インターネット時代の大人の役割」

新聞記事―――――――――――――――――――
有害サイトから子供を守れNPOと尾島町が講座
 県内で活動するNPO民間非営利団体)法人「市民立NPOカレッジ」と尾島町は30日町のボランティアセンターで子供をインターネットの有害サイトから守るための講座を開いた。暴力や薬物、ポルノなどのネット上に氾濫する有害情報に、子供達が接することが無いよう、親である大人達がボランティア組織を作り、対策にあたるのをサポートするのが狙い。県内だけではなく全国的にも珍しい取り組みだと思う。テーマは「大人として考えよう子供のインターネット利用」(7月1日 上毛新聞)
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 (論評)
「インターネット時代の大人の役割」

 2001年6月30日群馬県尾島町で「ねちずん村」のcontentsを使ったインターネット講習会をはじめて開いた。主催は尾島町役場で、他に市民立NPOカレッジと子供のインターネット利用を考える会がボランティアとしてサポートした。さらに会場で町民が使うインターネットPC 7台をNTT東日本が提供してくれた。当日の町内からの参加者は35人。他に隣接する太田市等から自治体職員らが見学に来た。(定員30名)

 規模は小さいが、行政と市民(NPO)それに営利企業のパートナーシップによる公益的サービスの形を実現できたことは幸いである。それにこうした試みは、多分日本では初めてだろう。誰かが始めるだろうと思っていたが、いよいよ自分でやるしかないと多少思いつめて動き出した。パートナーシップが案外容易に実現したのはご時勢と言うしかない。「はたしてこんなことでいいのか」と思っている大人は増えているということだろう。

 講習会では、冒頭で米国の親達、大人たちの活動を紹介した。米国ではNSBF(National School Boards Foundation)などが過去20年にわたり子供のためのインターネット・リテラシー問題に取り組んできた。そして今年の5月に「我々親たちはようやく子供を信頼してインターネットを使わせることが出来るようになった」と誇らしげに報告している。

 彼の国の大人たちは、子供たちに1.インターネットというメディアが人間と社会の向上、改良のために作られたこと。2.有害サイトの危険性について理解すること。等をじっくり教えてきたのだ。「子供にパソコンを買い与えるだけでは、大人として責任は果たせない」と主張してきたのだ。TV以上のメディア出現の意味を彼らは知っている。

 翻って日本の大人達はどうだろうか。私が子供の時代大人は文字通り大きく見えた。今の子供たち、少年、少女達は大人をどう見ているのか。群馬の大手プロバイダーでバイトをしている学生がこんなことを言っていた。「いったい今の大人はどうなってるのか?お客さんからの相談電話をとったら、いきなり、『今ポルノサイトを開いているんだけど、これよりもっと刺激的な所に入りたい。どうしたらできる』と聞かれた。電話の向こうで子供の声がしたので、後ろにお子さんがいるんですか?と聞いたら、『そうだ、子供と一緒に見ている』と言う返事。絶句した。」

 判断力が備わっていない子供たちまで「自己責任」を迫ってくるインターネットというメディアが広がる時代に大人が果たさなくてはならない役割はこれまで以上に重く、複雑な状況の中で、より高い判断力が求められてくる。そんなことに気づかない大人を若者たちは危ないと思ってる気がしてきた。

 今回の講習は、中高年の大人の自覚を促すのが目的だったが、講習の最後の意見交換の時間に、50代と思われる男性から「結局は有害サイト規制が必要」と言われていささか気が抜けた。その男性は極端な言い方をしただけだとは思うが、本音の気もする。NSBFという非営利組織で米国の大人達が「自分の大人としての役割を果たしたい」と主張しているのに比べると、日本の大人たちは「お上頼り」と言うことかもしれない。

 もっとも今回の講習ではボランティア活動をしてくれた学生から思わぬ元気と希望をもらった。大人が「お上の規制」を口にするのに対して学生は「インターネットは権力が規制できるような世界ではない」「最終的には健全な利用について一人一人が自分の考えを持つしかない」と言ってくれた。

 ねちずん村の活動は、親や大人の自覚を促すより次の時代のまともなネチズン(インターネット時代の大人)を育てる方に力を注ぐべきかと思うようになってきた。(下田 博次)