「いま中学、高校で授業中のケータイ利用が広がっているのではないのか。学校側、親は?」

 今朝(2005年5月15日)の新聞で、鹿児島県の某中学校の校長さんが「眉をそった女子生徒を入学式に出席させないという苦渋の決断をした」という記事を読んだ。学校マネージメントの基本となるルール、規範意識の大切さを訴えたかったようだが、IT時代の今は、もっと大きな規範崩しの行為が進行していることに危機感を持たなくてはいけないのではなかろうか。新聞に出た鹿児島の中学校長さんは、そのことをご存知かどうか。

 それというのも先頃私の研究室で新入学生114名に対し「中学、高校時代の学校でのケータイ利用」に関するアンケート調査をしてみたところ、中高生時代に携帯電話を所有し学校にそれを持ち込んでいた子ども達の半分以上が「教室で授業中に携帯電話を使っていた」と回答してきたのである。(図参照)

教室で授業中に携帯電話を使っていた?
使っていた 64
使ったことはない 21 
自分は使わなかったが、使っている友達がいた 27
114

 これは、私の予想を超えた数字で、年々その問題傾向は強まっていると推測される。しかもそのケータイ利用の内容で驚いたのは、「友達とのメールのやり取り」「掲示板への書き込み」というのが上位に来ているのはともかくとしても、「家族との連絡」がベスト4にあがっていることだった。聞いてみると「お母さんがメールを送ってきた」というのが多かった。唖然、というしかない。また授業中「出会い系サイトにアクセスしていた」という者が6人いて、これも予想外だった。

 ちなみに今回の我校の新入生対象のミニ調査では、中学時代は全員が「校内ケータイ持ち込み禁止だった」としている。高校でも学校側が「許可していた」というケースは半分ぐらいだが、「授業中ケータイを好き勝手に使ってよし」とは、さすがに指導してなかったハズ。そうした状況下で、子ども達の規範意識は「確実に」「着実に」低下している。そう判断せざるをえない。生徒の逸脱行為指導も、目にみえて分かりやすい現象にだけこだわっていては滑稽ということになりませんか。

 例えば今回のアンケートでは授業中のケータイ利用について「悪い事をしていると思ったか」と聞いてみたところ、過半数の学生が当時は「悪いと思っていなかった」「悪いという意識は無かった」と答えているのだ。

 こうした結果に、私はほとんど仰天状態なのだが、先般、セミナーでこのことを話したら、某高校教師から「むかしから授業中にマンガや先生の悪口を書いた紙をまわしていたアレの発展型ですね」と軽くいなされてしまった。

 昔とは次元が違ってしまったのですよ。授業中にケータイでゲームをしたり、出会い系サービスを使ったりワイセツ画像を見たりしていることは、いわば教室を抜け出してゲームセンターに行ったり、アダルト本屋に出かけていったりするくらいの「メディア・マジックによる逸脱行為」なんですと言いたかったのだが…。 

 これからITはもっと進化するので、このメディア・マジックによる逸脱行為の意味がそのうちはっきりするだろうが、正直言って今はそれ以上その人に解説する気にはなれない。ま、しかし、そんなことを言っていてもらちがあかぬので、今回のミニ調査を、出来るだけ早い時期に、もっと大々的に広げて行うつもりです。ともかく現状がどうなっているか、気になりはじめました。