ケータイと原発
 ―ドイツの改正原子力法の安全管理発想に注目―

 福島の原発事故とモバゲーやグリーなどの子どものケータイ・インターネット遊び事故には意外に共通性があると思うようになった。第1に原発とネット遊びサイトの安全管理の失敗の犠牲者は大人より子ども(青少年)に強く出る。放射能の悪影響は、成長の止まった大人より子供の方に強く出る。インターネットの有害情報の被害も大人より成長期にある子どもの方が深刻だ。子ども達が有害情報に接し、その有害な情報により有害な人物に引き寄せられ、性被害を中心とした心身の、ときには生命に関わる被害を受けるという事例は、世界でもケータイ大国の日本が最も多い。そのため国、総務省やネット業者は、にわかに『安全・安心』と言い出した。ネット監視や放射能フィルターならぬ有害情報フィルターの利用を叫び出した。しかし有害情報をブロックするフィルターは、もともとケータイに装着されずに売り出されたこともあり、普及もせず、ネット業者の安全管理も甘いため、むしろ健全サイトでの児童性被害などシビアアクシデントが増えている始末だ。
 リスク管理を真剣に考えなかった日本の原発が「後追いの失敗を重ねたように巨額の利益を上げるこどもの遊びサイトのリスク管理も後追いの失敗を重ねているように見える。つまり『子どもの遊びサイトの安全・安心』を声高に言わざるを得ないほどリスクが増している。

 どうしたらよいのか。心ある保護者や教員からは「子どもに危ないネット遊びをさせるサイトの商売を止めさせるべき」という声も上がっている。しかし原発と同じようにネット遊びの閉鎖は巨大な利害関係もあるので簡単にはいかない。そう思っている時に原子力資料室のネット配信http://www.ustream.tv/recorded/15075721 でドイツの改正原子力法の発想のユニークさを知った。

 一口に言うと、ドイツは法律で原子力発電所の建設を単純に禁じているわけではない。原子炉からの放射能が漏れ出しても原発という場所から放射能をださないようにしろ。それが出来ないなら原発を造ってはいけない。

 これは理性的な判断だ。私、下田も「子どものネット遊び商売をするな」といっているわけではない。『ネット遊びを子どもに仕掛けて儲けるなら、遊びサイト内で有害情報を発生させないようにするか万が一、発生しても子どもに届かないように安全管理せよ。それが出来ないのならそのような遊びサイトを作ってはいけないと主張しているだけだ。

 原発の安全管理にあたる役所が「安心・安全」を口先で唱えただけでは真のリスク管理にならなかったように総務省も日本の将来を背負う子どもらの安全を確保する気があるのなら「子どもを危険にさらさない管理ができないのなら、サイトの新設はもとより閉鎖もやむなし」との判断をすべきだろう。

 原発と同様に口先だけの安心・安全の唱えごとで真の安全管理をごまかすと、これから先の日本社会に大きな付けが回ってくるのではないかと思う。