ネットいじめ問題の解決を急げ

 先ごろ兵庫県人権啓発協会からのネットいじめに関する原稿依頼を受けたのを機に、日本の子どものネット利用問題に取り組んできたメディア研究者として、『ネットいじめ』の問題解決がますます重要になっていることを各方面に訴えて行きたい。

 言うまでも無く、子どものネット利用問題の表れは多様である。もっとも注目され、対策も真剣になるのが少年の犯罪・非行・逸脱を促す種類のネット利用問題群で売買春や薬物利用に直結するサイト利用などが挙げられる。この他、古くから大人の関心事としてワイセツ情報利用がある。そのためワイセツ情報の受発信サイト利用に大人はすぐ反応する。「子ども達に売買春させてはいけない」「薬物利用などは絶対ダメ」等、一般の大人にもブラックサイト利用の問題理解は早いし、それだけに対策もしやすい。

 しかしネットいじめのような子どものケータイ利用の問題に関しては、子育て教育に責任ある教員や保護者でも理解は難しい面があり、対策もさほど進まない。

 「イジメは昔からあるし、自分の子どもさえいじめられなければ問題ではない」と考えたり、「携帯電話を使った深刻ないじめなど想像ができない」という親・大人は多い。時には教師ですら「ネットでいじめるってどういうことかわからない」と言う者さえいる。学校内でのイジメなら想定内で動けるし、その気になれば早期対策も努力次第では可能だ。しかしネットいじめは、インターネットが作る仮想空間の中で起きるので、早期発見、対策は、きわめて難しい。できれば「わが校生徒とには無関係」としたくなる。

 あれこれの理由から、子ども社会でのネットいじめは、理解も対策も遅れに遅れたまま、多くの関係者が、次々起きるトラブル・事件という現状に流され続けている。そういうと、文科省は「情報モラル教育をしているから大丈夫」と言いたいだろうが、「自分がされても嫌なことはネットでもしない」程度の甘いお説教では、ネットいじめは止まらない。日本の子ども達のケータイ(今後はスマートフォン)からのネットいじめ悪質度は世界でも突出していることに危機感が薄い。日本では発達続けるインターネット利用の先駆的悪用事例が多いので少年期に悪いネット利用者の資質が作られ、彼らが成人し、日本のネット社会建設に関わるようになった時の社会への悪影響が心配だが、そういう視点はあるように見えない。今後のインターネットのコミュニティー(社会関係)形成力の発展が進行することを考えられる者なら、成長期の子どもを良質のネットユーザーにしなければ、次の日本社会は無いくらい真剣にならなければいけないはずだが・・・。こんなことを言っても目先のネット商品の流行に振り回される人々(中には教員も)には通じないかも知れない。そう思いつつも、ネットイジメの人間環境の中で成長を余儀なくされている子どもたちのことを考えると、私の心配や考えを発信せざるをえない。

 今必要なのは、モラルを子ども達にモラルを説く以上の、本腰を入れた対策だ。つまり学校と家庭、警察、地域はもちろん、地域のネットの見守り活動、青少年健全育成活動や人権団体を含めた大人達の知恵の出し合い協力関係作りが望まれるのだ。しかし、現実にはほとんど有効な手は打たれていない。

 そこで次回以降、ネットいじめ問題解決に向けた発想の転換と、対策に関して、私がこれまで考えてきたことを順次発信したい。