日本の子どものインターネット利用の特徴と問題点

 日本の子どものインターネット利用は独特であり、問題も多い。これについてはOECDの報告など海外調査も色々あるが、たとえばOECDが最近発表した報告書では「日本の生徒は読書をあまりせず、小説や新聞も読まず、インターネット利用もケータイに偏っている。ネットで公開の討論にも参加せずそのくせメールの受発信が多くケータイ依存である」という分析をしている。しかし一番わかりやすい説明をしたのはポ-リー君というアメリカの(NYの)高校生だった。私は2004年に群馬大学で「日米英の子どものインターネット利用に関する国際市民交流会」を開いた。そのときNYからポーリ君という高校生がお父さん、お母さんらと来てくれて、群馬大学の講堂で日本の保護者や教員、高校生らにこんなことを言った。

 「日本の高校生たちのインターネット利用は僕らと違うのでびっくりした。僕らはインターネットをパソコンからするが、日本の高校生は携帯電話からしている。僕らもメールを打つが、5本の指で打つ。ところが日本の生徒は親指がけでメールする。不便じゃない?それに画面も小さい。こういう小さな画面でまともなメッセージを読んだり議論ができる?なぜこんな不便なことをしているの?それと日本の女子生徒はこういう携帯インターネットを使って売春しているというけど、生活にも困っていない子がなぜそんなことを?」

 このポーリー君の発言がズバリ、日本の子どものインターネット利用の特徴と問題を言い表している。ちなみにポーリー君の疑問への答えは「ただ流行だから」と言うしかなかった。企業も親も「インターネットを使わせてどんな子供に育ってもらいたいのか」という考えも未だにない。私はそうみている。

 「流行だから皆と同じにしないといけない」という私の説明にポーリー君のお母さんがかみついた。「流行と言うが悪い流行は止めなければいけない。聞けば、フィルタリングも入っていないそうだが、親や教師はなぜ反対しないのか」

 このポーリーさん親子の発言が、現在でも日本の子どものインターネット利用問題の特色と問題をずばり突いている。現状は10年前と基本的に変わっていない。フィルタリングは普及していないし、ケータイ・フィルタリングの質も悪い。ネットの性暴力被害はむしろ広がっている。

 なぜ問題が続いているのか。理由は「子どものインターネット利用についてリスクアセスメント」が未だにないからだ。そもそも米国でインターネットを子どもにも解放しようとなったとき「インターネットをさせれば子どもは良くなる」という単純で都合のよい考えではダメだという議論が起きた。そうしたなかでフィルタリングの普及も始まった。私ども研究者も国際的な研究交流で「子どものネット利用でプラスとマイナスのベクトル(方向性)」を想定し話し合った。プラスのベクトルを「オープン・マインドなネット利用」と呼んでいる。反対にマイナスのベクトルを「クローズド・マインドな利用」と私達は区分している。子どものネット利用がプラス方向に行くように大人は努力しなければいけない。つまりペアレンタル・コントロールの勉強と努力が必要だと思う。