ケータイに代わる頭痛の種=「スマートフォン」普及の問題点

 このところ携帯電話会社は、各社ともスマートフォンの売り込みに走りだしている。理由はインターネット接続型携帯電話の普及が頭打ちになってきたからだ。そうした状況下で中高生が「ケータイよりスマホの方がかっこいい」と言い出し、早くも「スマホ買って買って」とわめき始めている。一方親のほうは「うるさいわね。お母さんはわからないから店員さんと相談して好きなのを買いなさいよ」と言う。このセリフを聞かされて、私は「あの時と同じだ」と思い、ショックを受けた。

 このままいけばスマホは、10年前のケータイ・ブームから起きたケータイ・トラブルの再現になる可能性が高い。つまり、スマートフォンの普及は保護者・教員にとって第2のケータイ問題の出現をもたらしかねない。もっと言えば、親、教師など思春期の子どもの子育て・教育責任を果たさねばならない大人達にとってケータイに代わる新たな頭痛の種になる可能性が高い。なにしろスマホはケータイに比べてペアレンタル・コントロール(保護者によるメディア管理、指導)が一般と難しいモバイル・インターネット機だからである。加えてスマートフォンを売るキャリアの保護者サポートも不十分なのだ。

 言うまでもなく、ペアレンタル・コントロールの基本は、「子どものインターネット利用の責任は保護者にある」という考え方にある。それからすれば子どものケータイ利用問題の原因の第一は、携帯電話会社が「ケータイはインターネットの端末機であり、単なる通話装置ではない。だからお子さんのケータイ利用には注意してください」と保護者に言わなかったことにあった。さらに言えば「これはインターネット接続ができる端末機なので、フィルタリングをしなくてはいけないことをご理解ください」と言わなくてはいけなかった。それがなされなかったために、保護者は子供からうるさくせがまれるままに、気軽にケータイを買い与えた。すなわちペアレンタル・コントロールもせず(つまり子どものネット利用について注意、指導せず)子どもに好き勝手に使わせたため多様な被害や加害事例が発生し、警察や学校を今でも慌てさせているのである。あのときの失敗の経験(子どもにせがまれるままに買い与え、後は好き勝手にさせたという失敗)がスマホの出現でも繰り返されている。つまり失敗経験が活かされていない。

 なにしろスマートフォンは、ケータイ以上のインターネット・ターミナル・システムなのである。だから思春期の子らには、好き勝手に使わせてはいけない本格的インターネット機なのだ。にもかかわらずフィルタリングの利用はケータイのように義務付けられていないし、設定がケータイ以上に保護者にはしづらい。フィルタリングは危ないサイトの閲覧制限だが、スマホはサイト利用に加えて、アプリを利用してグレードアップを楽しむインターネット機だから始末が悪い。要するにスマートフォンはフィルタリングしづらく、保護者によるネット利用制限がしにくいネット端末機なのだ。

 子どもが利用すればスマートフォンのアプリはゲームや遊び系統が中心となるはずだ。ということは、スマートフォンはケータイ以上にネット遊びに適したインターネット機で、画面も小さく、いつでもどこでもネット遊びができるので子どもがネット依存になりやすい。ケータイ以上に自由度が高く、面白いうえに、親の目が届きにくいので、自制心の弱い子であれば、どっぷりネットに浸りきることもできる。したがってケータイ以上のネット依存が進むだろう。そこが携帯電話会社やコンテンツ業者のつけ目であり、親や教師にとっては頭痛の種ということになろう。KDDIの会長は「ケータイ問題の根源は保護者を置き去りにしたことにあった」と述べたが、その業者の反省が早くも忘れられている。