自ら動き出した人々とともに歩む

 2008年度の仕事納めは高知だった。高知市内での講演は初めてのことで、教員の方々にペアレンタル・コントロールについて私の考えを聴いてもらった。携帯電話は電話ぐらいに考えているならば、ペアレンタル・コントロールというインターネット時代の子育て教育の考え、方法論を身に付ける必要もなかろう。

 しかし今や日本の子どもらは、電話やテレビというオールドメディアの時代ではなく、インターネットという新次元の、それも発展途上のメディアとともに生きはじめているのである。親や教師は、未だインターネットというメディアの本質、全体像が理解できていない様子だ。(インターネットそれも携帯インターネットの一部分しか理解されていないようだ)

 それで今回もテレビというマスメディアとインターネットというパーソナル・メディアの本質的違いについて、具体例を挙げつつ説明した。ここを意識化できないと、子ども達のネット利用感覚が理解できず、ネット遊びのリスクについても想像が及ばない。

 もちろん理屈だけで想像力(リスク回避能力)がつくわけでもない。だから実技指導にも力を入れなくてはいけないことが次第にわかってきた。今回の高知行きでは、講演の後、高知市に隣接する越知町で21人の有志の方々が集まって、自主ゼミのような市民インストラクター・ミニ講座も開いた。こちらの方は、いわゆる動員型ではなく、本当に勉強したい人達がテキスト代など自腹を切っての参加で、当方としては気持ちよく、話し甲斐のある会となった。

 私の体調が思わしくなく、夫婦で理論と実技を分担して、通常の市民集中講座の半分くらいの時間でレクチャーをした。受講者の顔ぶれは小学校校長をはじめとして、医療関係(PTA)、教員、県警など高知の熱意ある人達ばかりで、この人々がこれからどのように活動なさるのか、私は楽しみにしている。

 思うに2008年度は、子どもと携帯電話に関して国民的関心が高まった年だった。しかし、騒ぎの割りには全国的には上すべりで、中味のできなかった年のような気もする。携帯電話問題はインターネット利用問題であり、オンライン・ゲーム機やモバイル・パソコンなど端末の違いはあれ、子ども、特に思春期の子どもにインターネットをどう使わせるかという問題意識が問われているのである。

 私どもは各地で、点々としてはいるが、そのような問題意識を共有する人々ととも2009年度も地道な歩みを続けていきたい。

 新年度は、依然出口が見えない日本の子どもとインターネット問題の解決の糸口を「ペアレンタル・コントロール能力」の向上に求め、インターネット時代の子育て教育を支援する専用ネットワークシステム開発を加速していきたい。

下田博次・群馬大学特任教授