子どものインターネット利用にプラスとマイナスの2つの方向

 10年ほど前、NTTドコモなど携帯電話会社の人たちは「ケータイを使い込んだ子ども達は賢くなる」と言っていました。そんな保証はどこにもありません。もともとケータイより安心なパソコンからのインターネット利用でも、子どものネット利用ではプラスのベクトルとマイナスのベクトルが発生する。大人は都合のよいことだけ考えていてはいけないという合意が我々メディア研究者仲間にはあります。2つのベクトルとは何か?私どもはプラスの方向性を「オープン・マインド・ユース」つまり解放的なネット利用と言っている。反対にマイナスのベクトルを「クローズド・マインド・ユース」として区分しています。その2つのベクトルの特徴は表にしてあり、参考にしてください。この2つのベクトルの違いを対比的にまとめると、オープン・マインドは開放的で非差別、平等的。クローズドは閉鎖的、差別的ネット利用です。具体的に言えば解放的な利用は実名発信によるホームページや掲示板利用などで、誰でも閲覧でき意見も書き込みもでき、また、意見の違いを話し合う事が出来るサイト運営を特徴とする。これに対してクローズドな利用ベクトルでは、学校裏サイトのように特定の仲間しか見ることも書き込みもできないサイトの運営形式です。学校裏サイトは気の合った生徒しか入れないようにし、気が合わなかったり自分たちとは異質な人を誹謗する。排除するだけでなく、悪口を言って盛り上がったり、時にはわいせつな写真を見せ合ったりして盛り上がる。要するに密室化して親や教師を締め出して盛り上がるのが目的のネット利用です。

 しかし、もともと米国ではインターネットは、そんな使い方を想定して子どもらに解放されたわけではありません。もともとインターネットは年齢や性別、国や人種の違いを超えて自由に個人の考えを発表し、意見調整をすることができる高度なソーシャルスキルを実現するメディアです。マイナス方向のネット利用はインターネットの設計思想、開発の理想とは反対で、日本の子ども達は、ケータイから密室的、封鎖的マイナスのネット利用のベクトルに走ってしまった。そしてこの傾向は今後さらに強まろうとしています。そう判断する理由は、ペアレンタル・コントロールが難しくマイナス方向の利用に向かわせるモバイル端末やモバイル端末向けのコンテンツが今後ますます発達するからです。プラスの利用のベクトルに子どもたち自身が気づいてくれれば良いのですが、それは甘い期待です。それにネット利用の仕方が悪いからと言って子どものモラルに任せるだけでは無責任でしょう。

 大人(特に保護者・教員)がペアレンタル・コントロールを学んで賢くなり、ネットワークを組んで連携するしかないと思います。
 ペアレンタル・コントロールの基本は注意・見守り・指導ですが、私はこれに「期待」を追加したい。「インターネットという素晴らしいメディアをオープン・マインドの方向に使ってほしい」という期待を子ども達に語りかける対話が必要だと思います。つまり子どものメディア利用への期待ということです。さらに子ども達を中毒的・閉鎖的利用方向に誘導するネット業者には消費者として圧力をかけていかなくてはいけないと思います。

 私は現在、保護者や教員の皆様がこれからどのようなことを学び、どのような協力的行動を起こすべきかについて考えをまとめております。ネットでも発信を致しますのでお問い合わせいただければと思います。

 お読み下さりありがとうございました。