ペアレンタルコントロールの実践
 -期待イメージの形成―

 ペアレンタル・コントロールで最初に保護者がすべきこと。それは、我が子がインターネットというメディアを使ってどんな人間に成長してほしいのか望ましいイメージを描くことである。つまりインターネットという強力なメディアを使って知的で健全で発展的人間関係を作る能力(ソーシャルスキル)を身につけ、ネットを使って広がった知識や人脈などについて、親、兄弟にも語って聞かせてくれるような人になってほしい等の明るい成長イメージを描いたり、逆に「ネット利用でこんな子になって欲しくない」という望ましくないイメージを描き、そこから反転して明るいイメージを模索してみるのもよい。

 私の経験ではインターネットを使った望ましい子どもの成長イメージは案外描きにくいようで、ネットを使って悪くなった事例を新聞報道などから学び、我が子のネット利用のリスク回避という方向から「望ましい子どものネット利用イメージ」を描いてみる方がやりやすいようでもある。例えば思春期のストレス解消のために男の子がゲーム中毒になってしまったり、ネット荒らしやネットいじめの加害者になる。女の子であれば淋しい時、悲しいときに慰めてくれる相手を求めて個人情報発信をするなど危険な出会いにつながる利用が癖になってしまいがちだが、そういう誘惑に負けない子どもに成長してほしい等といった「期待イメージ」を描いてみてもよい。

 実は我々子どものネット利用研究者の間では「インターネットというメディアを使えば子どもは良い方向に成長するなどと甘いことを考えてはいけない」という合意がある。つまり子どものインターネット利用は条件次第で良くも悪くもなると考えている。つまり子どもの資質(ネット利用を始めた時の子どもの心と能力の発達度)やネット利用環境などの条件によって、ネットを利用する子どもはプラスの方向にもマイナスの方向にも発達、発展してしまうのである。だからこそ保護者による我が子のネット利用に関する期待イメージの形成が重要になる。それがしっかりすれば我が子のプラス方向へのネット利用のしつけや指導(ペアレンタル・コントロール)の方法もおのずと考えられるようになる。
 それではここで改めてペアレンタル・コントロールの方法、手順をまとめてみよう。

 ペアレンタル・コントロールの手順

  1. TVとインターネットの違いなどインターネットというメディアの特質を常識に理解する。
  2. その上で、インターネットを使ってどんな人間に成長してほしいか、期待イメージを描く
  3. ネット端末、利用サイトの選定
  4. 注意・約束(フィルタリングをかけるなど)
  5. 見守り・指導

 既に述べたように、子どものネット利用の管理、監督の営み(ペアレンタル・コントロール)で最も重要なのが「期待イメージ作り」だが、それをするためにはインターネットというメディアについて保護者が最小限の知識(親・教師として知るべき常識)を得る必要がある。その知識をもとに、次は我が子にどんな使い方をさせたいかという「期待イメージ」を固める。そうすれば、子どもが「インターネットをしたい」と言い出した時冷静に対応することができる。例えば我が子の性質、興味、能力的発達段階などを見極めていきなり携帯電話やゲーム機からネットに入らせないで、パソコンからネットデビューさせる等、作戦を立てることができる。ちなみに米国ではパソコンを子ども部屋に持ち込ませず、親の目の届く居間に置いて良質なフィルタリングをかけて使わせるのが常識だ。ケータイやゲーム機、スマートフォンなどからフィルタリングもかけずに思春期の子供にインターネットを使わせている日本は異常だろう。次に保護者の見守りがしやすい端末機を選び、フィルタリングも有害情報(サイト)を厳しく排除するフィルタリングサービス(ホワイトリスト方式)を選んだら、使用上の注意・約束などルールを定め、トラブルが発生したら相談を受け対処する。我が子に3つの能力(情報の正しさなどを判断する力や発信の責任力・危ないサイトを見ない自制力)が身についたと判断したら自由に、つまり自己責任でインターネットを使わせる。そうしたインターネット時代の親の役割を果たすことができる保護者を地域で増やし、中学・高校などの教師と親が連携してオープン・マインドなネット利用で子どもを育てていくプラスのネット利用方向。それがインターネット時代の子育て教育の社会的システムのイメージである。