高知での講演には力が入った
先ごろ高知の市民インストラクターである山中さんを訪ね、以前より子どものケータイ利用問題に関心の深い四国の方々に高知大学のメディアセンターでレクチャーをさせてもらった。
当日の私どものレクチャーの内容について言えば中心のテーマは、今後とも発展・普及が進むインターネットというスーパーメディアの設計思想についてである。インターネットというメディアが欧米・特に米国でイヴァン・イリイチの「ラーニングウェブが必要」という呼びかけにこたえて若き科学者・技術者達の夢のメディアとして芽生え、発達してきたいきさつについて2006年の「子どものネット利用に関するアジア会議」での議論の経験を中心に話をした。
Webと呼ばれるインターネットは、テレビやビデオ、新聞のようなわかりやすい情報伝達メディアではない。我々日本人は欧米で創造されたこのメディアを利用体験的に理解はするが、その設計思想(メディアの設計に携わった技術者、市民らの夢・思い)にまで考えを及ぼし、子ども達にも語りかけるレベルにはない。次々と出現し流行を作る目新しい道具(インターネット端末)の購入や操作方法に関する興味だけでは、インターネットというスーパーメディアを使って子ども達をどう育てるかという発送はないし、インターネット時代の子育て議論には至らない。(逆に、子どもだけでなく大人(親や教員までも)たちもメディアマジックに振り回されるだけになる。)
電話や郵便のような1対1通信の機能はもちろん、テレビのような1対nの伝達力。あるいはテレビ会議のようなn対nのコミュニケーション力に加えて巨大な情報蓄積、検索のパワーを有する高度複合メディアとしてのインターネット(Web)の設計思想を深く理解することで、インターネット時代の子育て教育の発想が出てくる。
高知では、この下田の呼びかけに対する確かな手ごたえを感じることができて嬉かった。高知での集まりではそうした下田の問題提起に加えてスマートフォンのようなモバイルインターネット傾向に潜む子どものネット利用問題の現状や今後の展開、さらには、ますます需要になるペアレンタルコントロールの実践(ネットで子どもを駄目にしない対策や逆に、ネットで子どもを伸ばす発想など)について考えを述べた。子ども向けに売り始めたスマートフォンは子育て教育上ケータイの二の舞になると私どもは心配している。そのことは本年度のインストラクター養成講座でも説いていく。スマートフォンの子ども社会への普及は、ケータイ以上のペアレンタルコントロール知識と努力を迫ってくる。
そうしたレクチャーも楽しかったが、空海のふるさと香川善通寺での「涅槃桜」の香りや室戸岬での達磨夕日の輝きにも接し、元気をもらって帰宅できた。四国の皆さんありがとう、またお会いしましょう。